SPECIAL COLUMNスペシャルコラム

spec_img_main spec_img_main_sp

LIVING SOILS / 生きた土壌

柳 忠之
2020/6/19掲載
Page 2/3

自社畑で持続可能型農業の認証取得25%達成
契約栽培農家には認証取得のサポートも

この討論の後、ル・ギユー氏にインタビューしたところ、モエヘネシーでは具体的に以下のような取り組みをしていると言う。

モエ・ヘネシーはグループ全体でシャンパーニュ地方に1,500haのブドウ畑を所有し、現在、HVE(高価値環境認定)とVDC(シャンパーニュ地方持続可能型ブドウ栽培)の認証をその25%で取得済み。ヴーヴ・クリコでは2017年にはすでに、除草剤の散布を完全に排除している。

除草剤を撒かず、下草を生やす早生栽培で土壌の流亡を防ぎ、草とブドウ樹の競合が問題となる3~7月は草を鋤で刈り取り。畑での作業には土壌を圧迫しないよう軽量のトラクターを使用。ブドウ畑に羊を放して草を喰ませてもいるとル・ギユー氏。害虫対策に使用するのはフェロモンカプセル(性撹乱剤)。これらの施策は自社畑に限らず、モエ ヘネシーの各メゾンにブドウを供給する栽培農家にも、そのノウハウをフィードバック。認証手続きのバックアップまでするそうだ。

気候変動への対策も怠りなく、ル・ギユー氏によれば、モエ ヘネシーはグローバルで3分の1、フランス国内に限ればすでに100%をグリーンエネルギーで賄っており、輸送においてもディーゼルや航空機を可能な限り使わず、鉄道や船舶を活用。温暖化ガスの削減に取り組んでいると言う。

気候変動に応じた取り組みが必要
ブドウ品種やクローンにも変化が

『気候変動に我々はどう適応すべきか?』の論議では、シャンドン・カリフォルニアの醸造責任者であるポリーヌ・ロート氏が次のような問題を語った。

「カリフォルニアは安定した地中海性気候と言われてきたが、今は違う。年ごとに気候の変化があり、ワインにヴィンテージ差が生じている」。

そのため、畝の向きや植密度の変更、キャノピーマネージング、灌漑の仕方、夜間収穫の実施など、気候変動に合わせた様々な取り組みの必要性を説いていた。

先般、温暖化対策としてポルトガル原産の品種や交配品種が認定されたAOCボルドーおよびボルドー・シューペリュール。その規則改定にも携わったボルドー大学のキース・ヴァン・ルーウェン教授は、「気候が変われば同じ品種でもワインのスタイルは異なる」と指摘。台木やクローンの選択が今後さらに重要となり、「以前はよく熟すクローンがもてはやされたが、これからは晩熟のクローンが注目されるだろう」と述べた。

最年少の世界最優秀ソムリエは
オーガニックのワインを唎き分けられるか?

『オーガニック、バイオダイナミック、ナチュラル、その違いは?』では、昨年、27歳の若さで世界最優秀ソムリエの座についたマルク・アルメルト氏が登壇。南フランス、南アフリカの造り手と議論を交わした。

司会者からそれぞれの定義を尋ねられた南アフリカ「ロングリッジ・ワイン・エステイト」のジャスパー・ラーツ氏は、「オーガニックは”見下ろし”、バイオダイナミックは”見下ろして見上げ”、ナチュラルは”振り返る”こと」と定義。つまりオーガニックは土壌に目を落とす農法であり、バイオダイナミックはオーガニックと同時に、天体の運行を参考にするため空を見上げ、ナチュラルは過去への回帰なので、後ろを振り返ることと言う。

アルメルト氏は会場の視聴者から、「ブラインドテイスティングでそのワインがオーガニックやバイオダイナミックかわかるか?」と質問され、「難しい」と回答しつつも、「ただし、ある種の余韻や複雑さを感じた時に、この造り手はオーガニックやバイオダイナミックではないかと推測し、それが当たることもある」と語った。

PROFILE
柳 忠之

ワイン専門誌記者を経て、1997年に独立。業界歴30年のワインジャーナリスト。ワイン専門誌のほか、ライフスタイル誌にもワイン関連の記事を寄稿。シャンパーニュ騎士団シュヴァリエ、ボルドー・ボンタン騎士団名誉コマンドゥール。

数世紀の歴史を誇るメゾンを擁する
ラグジュアリーワイン&スピリッツの世界的
リーダーとして、
私たちはステークホルダーと地球全体に
対して果たすべき責任があります。
地域社会を支援し、社会にポジティブな変化を
もたらすことが私たちの役割です。
自然を大切にすることは、
最終的には人を大切にすることに繋がります。
それが一つになって「共に生きる」ということなのです。

なお、ディアジオ グローバルでも、
環境負荷の低減」、「適正な飲酒の促進」、「活発なコミュニティの構築」の3つのエリアで、
CSR活動を行っています。